【第一章:溢れてしまう】

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 ──う~、あたまいたい。  目を開けた瞬間、磯城(しき) (ひかる)は思わず両手で頭を押さえた。  典型的な二日酔いの朝だ。  少し飲み過ぎたかもしれない。どれくらい飲んだのだろう。  最悪の目覚めにうんざりしつつ考える。  昨夜は確か……。  そうだ、昨日はサッカーチームの応援に行き、終わったあとで誘われて恒例の打ち上げに行ったのだった。  そこで食べて飲んで、そのあと二次会にも行って、それから。  ……それから?  必死で思い出そうとするが、頭に靄がかかったように記憶が曖昧だ。なによりも、頭痛が邪魔をして考えが纏まらない。  それより、ここはいったいどこだ?  仰向けに寝た状態で視界に入るすべてに見覚えはない。ベッドの感触もシーツの手触りも、親しんだものとは違う。なんとなく覚悟はしていたが、自分の家ではないということだ。  それどころか広い天井と、何より中央のライトに至ってはどう見ても一般家屋のものではない。  ──やっぱホテルか、……え?  その時、光は隣に自分以外の何者かの気配を感じた。  同じベッドに、誰かが、いる。
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