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第三話「星屑を寄せ集めて」
「祝井くんの、好きなとこ?」
部活が終わって、コウさんを家に送る帰路を辿りながら、俺は問いかけた。俺のどこが決め手で、付き合いだそうと思ってくれたのか、を。
コウさんは、視線を刷毛で暖色の油絵具を伸ばしたような空に視線をやり、そうだなあ・と少し考えた様子のあと。
「一生懸命なとこかな。」
一生懸命? 付き合う前、部活を見に来たことがあったんやろか。それを聞くと。
「ちがう、ちがう。部活もだけど、わたしと接するとき一生懸命になっとる、そこ。すごく嬉しいし」
にっこり笑うコウさんに、俺は顔が熱くなることを自覚する。一生懸命、確かにそうかもしれん。やけど、こんなふうに言われると、ほんまに俺は年下なのだな、と実感させられた。
「喋るときとか、一生懸命、目を見ようとしてくれて……あと、わたしが勝手に作りはじめたお弁当に、ちゃんと感想くれるのも嬉しい。材料とか、調味料とか、そういうの言い当てっこするのも、すごく楽しい。作り手からすれば、めちゃくちゃ嬉しい! 最初こそぶつぶつ言いながらでも、結局はおいしそうに食べてくれる祝井くんが、なんかね、いいなあって。思ってた。」
噛み締めるように、けれどどこか泣きそうな表情で言うコウさんは視線を落とし、俺を見つめて微笑む。
ああ、俺って愛されてるんか、なんて。少し、自信を持てた。……
「……嬉しいけど、俺ほんま男らしないな……コウさんのイメージんなかで」
「そんなことないない! 思うときあるよ、男らしいって。腕の血管とか色っぽくて、好き」
そう言うと、コウさんは俺の腕をそっと掴む。浮き出ている血管を指でなぞり、いいなあ~と嬉しそうな表情をしている。なんやこれ、恥ずかしいわ。
「あと、力も強いし。男らしいよね」
「昨日のこと? ……すません。水に流したってください」
「はは。いいよ、もう。でも、あの祝井くんも、あとから考えたら可愛らしいと思った。もちろん、少し怖かったけどさ」
可愛らしい、か。怖いのは当然だっただろうけど、可愛らしいはないだろう。女からすれば、好きな男にかっこええ言われるんと同じや。それってどないや? 落胆するに決まってる。
「確かに俺、昨日、どうかしてた」
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