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俺は髪をかきあげ、視線を泳がせ顔を熱くしながら言う。好きな子を部屋に呼んだらそうなるか、という流れにやられていた気がした。誰もがそういうわけじゃないし、同級生の噂に聞いていたことを、鵜呑みにしすぎた。
「かっこわるい。アホすぎ」
「そんなことないよ。わたしが臆病なだけだって」
「いや、かっこわるい。……二度とせん」
「んー、ありがと。でも、二度とは困るよ。わたしも祝井くんと、エッチなこと。してみたいもん」
笑ってフォローを入れてくれるコウさんが、本当に優しい。そして、してみたいと言ってくれた言葉が胸にグッとくる。繋がりたいと思っとるんは、俺だけちゃうねんな。――安心した。
「コウさん、ほんま……」
「ほんま?」
「尻軽なのか、古風なのか……」
「尻軽じゃないって! や、祝井くん相手だと、尻軽になりそうで、情けないときもあるんだけど」
「ですよね、安産型みたいやし」
「どこ見てんの!」
ばし、と平手で軽くたたかれ、はは、と俺は笑う。こうしてコウさんと仲良くして笑う日がくるとは、オカンの印象しかなかったし、最初の頃は思いもしなかった。理想とは程遠いとか、そういうことも今は思わない。ただ、傍に居てくれるだけで本当に幸せなのだ。恋って、ほんま、すごいわ。
「あ、わたしも聞きたいことあって」
「なんです」
「キミ、そのー……。経験あんの?」
ちら、と見られて、ああその視線と見方やめてくれ、可愛らしい。やけど少し恥ずかしいな、と思いながら首を振る。「ない、です」
「やりけたことは、一応、あったんですけど。空気で、みたいな。流れ、みたいな。あんま今みたいに、コウさんとしたい、そういう人間としたい、いうんやなくて……こう、雄やから雌に惹かれる、みたいな。そんなんでした」
「本能的みたいな?」
「です」
そっか。コウさんは視線を外して、「本能でもいいとおもうけど」と。意外なことを、ぽつりと零した。
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