第三話「星屑を寄せ集めて」

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「い、祝井くん」 「どこが悪いん? 赤なるコウさん、ごっつ可愛い」 「……本当に?」 「うそ」 「この天邪鬼!」 「ほんまほんま」  ――汗が伝わってくると、ぴとりとした感覚が俺の触覚を支配する。まるで指紋と指紋が重なって、手と手が一つになってしまいそうな、目の前のすべてが白く溶けてゆくような、そんなデジャヴを憶えた。  それが、たまらなく愛おしい。 「コウさん」 「ん」 「好きです」 「……わたしも、」  好きだよ。――にひ、と微笑むコウさんが可愛くて、しょうがなくて。俺って、こんな気持ちを抱ける人間だったのか、と自分に驚いていていて。思わず、鞄をドサリと落として、抱きしめた。 「い、祝井!?」 「呼び捨てとかないわ……呼び捨てるなら名前」 「それ、慣れないから」  ふに、とコウさんの存在感ありすぎな胸が、俺の胸板にやさしくなじむ。 「あんた、ムダにほんまそんな表情したら、あかん」  さらっとしたコウさんの髪を、軽く掻くと。石鹸の匂いが、ふわりと鼻腔を擽る。 「俺、どうにかしそう。舞い上がってもええ?」 「お、落ち着いて、ヒッヒッフー……。ここ表だから!」  それ、ラマーズ法やん。言うあたり、コウさんはものすごく慌てているようだな、と感じた。それがまた愛らしい。でも、拒みはしない。抱きしめられるがまま、という言葉が今はぴたりと似合う。そんな状況に慌てふためく、あなたが。 「好きですよ。」  まだ、なーんも見通しがあらへん関係やけど。 「あ、ありがとう。……わたしも、好きだよ。」  その声も、言葉も、みんなみんな。好きです。
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