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「え?」いきなり抱きしめられ、わたしは惚ける。抱きしめている主は、クラスメイトの男の子だ。
断った、はずなのに。頭がぐしゃぐしゃになる。力が強くて、離れられない。祝井くんに見られたら、どうするの、と自分に言い聞かせてみるけど、この子めちゃくちゃ力が強い。「葛西、好きや」ああもう聞いたよそれ、とか飽きている自分が居る。
祝井くんにしか言われたくない、祝井くんにしか見てほしくない。
他は、いやなんだ。
「のけやア!」
一刹那、祝井くんの声が、降ってきた。驚いて顔をあげ、ハッとして声の主である、彼を見上げる。窓辺に足をかけている祝井くんは、わたしが何かを言ったり、リアクションする前に、すでに――飛び降りていた。
「ちょ、祝井くん!?」
「人の女になにすんねん、ほんまどついたろか! あァ?!」
心臓が飛び出そうになったけれど彼は、飛び降りて軽快に着地をし、挙句告白をしてきた男子にずかずかと歩み寄る。彼はもう、わたしから離れていた。「わたし、断ったから、ね!?」そう宥めるように声をかけても、祝井くんは返事をしない。その代わり、ちらりとわたしを見て、本当に不機嫌な目付きを寄越した。仕方ないじゃないか、不可抗力だよ。
「このっ……」
男子の胸倉を掴み、祝井くんは拳を振り上げる。わたしは後ろにいたが、反射的にその手を握っていて、「だめ!」と声を張り上げた。
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