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「コウさん」
「ん?」
「手」
「え? あ、いや、ここでそれは……」
は・はは。俺は見事に手を繋ごうと持ちかけたのに玉砕した。「手も、びっしょりやし」そう言ってコウさんは手を軽く引き、両手を重ねて苦笑した。
「……はあ、」
手ぇくらい、ええやん。この先どないすんの? そんな悩みが尽きない。
*
「手ぇ繋がせてくれへん?」
こういうときは、先輩にレクチャーを――と思い、俺は部活後。部長と副部長に、何気なく相談した。
「本人が、手汗気にしとるんなら、しゃあないわ」
「女の子って、気にする子と気にせん子の差、激しいらしいしな。可愛らしいやん」
それは、そうですけど。俺は少し黙り込んで視線を落とす。
「ほんまに俺のこと、好きなんやろか。」
付き合いだしてすぐ、こんな疑問を抱くこと自体が、おかしいのか。
「あいつ可愛いからなー、葛西。それさえ可愛い。話し聞いてても可愛い」
「可愛い連呼すなや。手ぇ出したら、ただや済まないですよ」
「おー恐い恐い。ほんまに好きなんやなぁ」
副部長が揶揄うように、けれど本人は真面目に刻々頷きながら、コウさんを可愛い可愛い言って、なんやハラ立つ。けど、一方では微笑ましく部長が言うと、なんだかむずかゆい。
今更だが、コウさんは葛西コウという。人柄と裏腹に、中性的でかっこええ名前やなと思った。
「何からすればええと、思います?」
年上と付き合ったことなんて、ないし。めっちゃ中坊。恋愛経験、浅いし。
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