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「ええなぁ、祝井くんみたいな男前が、彼氏で……」
「あんたも、いい子と付き合ってるじゃないの」
書道部での活動を終え、片付けを終え、わたしは友達と話していた。
「あたしのなんか、もう寝顔ブッサイクやしおなら臭いし、ほんま堪忍してほしいわぁ」
「おならは、誰でもします」
つい先日初めての彼氏が出来たわたしは、友達にこう話された。祝井という子がわたしと付き合いだして、ファンの子が泣いているらしい。確かに祝井くん男前だし、納得だ。
「わたしはまだ、隠してるっていうか……」
「おなら?」
「おならも、寝顔も。何もかも、まだ綺麗なままで見せようと、してるのかな」
そんなこと、いつまでも出来るわけがないんだけど。でも、祝井くんの前だと、少しでも女の子らしくありたいと心から思ってしまう。おならだって堪えるし、眠くても目をこすってやり過ごす。
でも、昨日の状況は、複雑だった。本当に、してみたい、早く繋がりたい、っていう男の子にしか見えなかったから。だって、好きすぎて・言ってくれたのもわかるけど、まだそれを飲み込み切れていない自分が居る。口だけでは何とでもいえる。疑い深い、夢見がちな時分が、こういうとき。とてもいやだ。
ただ、祝井君を信じられることさえしてればいいのにな。わたし、馬鹿。
「やけど、男の子って、キホンは。みんなそんなもんやで?」
「そうかなあ」
「ん。中学生なんて、めっちゃいろんなこと考えて、頭ふくれとる時代言うし。そら彼女できたら舞い上がるわ。少しは許したげないと。ただでさえ男より女のほうがオトナ言うやないの。で、コウはそのまま年上やし、不器用なりに、少しずつリードしてあげるのが、ええ。その姿勢が大事なんやから」
その言葉に、わたしは少し納得する。たかが一年、されど一年。一年あったら赤ん坊もスゴク育つよ。それくらい差があるんだ、わたしは祝井くんをリードしてあげないと。そう、か。そうなんだよな。そう、思う。
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