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「マナトが紅と遊びたいって〜」
「嬉しいなぁ、いつまでそんな事言ってくれるかなぁ」
「暫くは大丈夫よ〜、でも最近は体力も半端ないから覚悟しないとね〜」
そうなのだ。
マナトくんは流石に男の子だけあって、公園での遊びも激しくなってきた。
因みに先月はスケートボードを一緒にやったのだが何時間でも飽きずにやっていて、私が先に根を上げた。
「マナトくんの誕生日プレゼント何がいい?」
「そんなの決まっているじゃない、紅が良いって言うよ〜」
「やだ、男前」
照れる、と言えば大笑いする栞里。
「そんな気遣いいらないからお誕生会には来てね〜、ウチのスタッフも強制参加だからまた賑やかにやるよ〜」
去年の誕生会は栞里ファミリーに私がお邪魔した形だったけれど、幼稚園でお友達の誕生会にお呼ばれした時に大勢で賑やかだったそうで、マナトくんもそういうのが良いとリクエストがあったそうだ。
だからクリスマス会はお店のスタッフさんも参加で賑やかに行っていた。
お誕生会の日は私も休み。
よし、今夜からプレゼント検索しよう。
「最近ど〜お?」
「何もないよ。3日前にもそう言ったよ」
「3日経ったら変わっていると思ったから聞いたのよ〜」
「変わんないって」
「え〜変わるよ〜。1日1日変化して進んでいるんだからね〜。突然イケメンが現れる可能性だってあるでしょ〜?」
「ないない。そう言い続けて何年も経ってるでしょ」
呆れながらそう返せば栞里は真面目な声色で、
「あるある。毎日の通勤でも図書館でもコンビニでも何処でも。すれ違っているかもしれないし、出会っているかもしれないんだから」
そう言った。
栞里の言う事はわかっているつもりだ。
そういう可能性もゼロではないかもしれないけれど、私の場合限りなくゼロに近い。
ドラマチックな出逢いなんて期待していない。
栞里と話すのは楽しい。
笑えるし、心が温かくもなる。
けれど話し終えた後はその分寂しくなる。
ガランとした部屋に見てもいないTVからは旅番組。
1人だって改めて実感してしまう。
つい吐き出した溜息はいつものようにズシリと重さがあって、それを誤魔化すように食事の後片付けを始めた。
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