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ふう君が僕の家族になった(龍之介)
僕の名前は笠原 龍之介15歳中学2年。
お父さんが最近病院に寝泊まりしている、これまでもたまに心配な患者さんがいると病院に泊まることもあったけど、毎日泊まることはなかった。
お父さんに聞いてみると、数日前に運ばれてきた少年の事を話してくれた。
少年は10歳で何日も食べる物も飲むものも無く、意識不明で救急車で運ばれて来たと言った。
少年が何日もたった一人で部屋にいたことを想像するとたまらない気持ちになった。
暗く誰もいない部屋、食べ物も飲み物もない毎日・・・・・そんな事は自分には耐えられない。
自分も彼の為に何かをしたいと思った、話し相手でも食事の世話でも何でもよかった。
お父さんに言うと「話をしてみるか」って言われてすぐに病院へ向かった。
7階の個室に入ると少年はベッドで寝ていた。
近づいて顔を見る、白い顔をして閉じた目には長いまつ毛、髪は柔らかく少しカールしていた。
動かない少年は人形のように綺麗で可愛くて、動くとは思えなかった。
暫く側に立ってジッと顔を見ていた、椅子を持ってきて座る。
いつ眼を開けるかわからないから、片時もそばを離れられなかった。
布団の中から少年の手を出して触ってみる。
細くて冷たい手をしていた、指は折れそうなほど細く長い。
手首も本当に細かった・・・・・
こんな細い手で、一人で頑張ったんだと思うと涙が止まらなかった。
細い指をそっと触る、そのまま手を添えて少年が目を開けるのを待った。
少年の名前は西宮 渢、僕はふう君と呼ぶことに決めた。
目が覚めたら「ふう君!僕は笠原 龍之介だよ」って言おう。
夜になってやっとふう君が目を覚まして僕の顔を見た、すぐに自分の名前を教える。
学校が終わったら毎日くるって言ったら少し驚いた顔をしていた。
でも一緒にご飯を食べて一緒に寝るとふう君は安心してすぐに寝てくれた。
僕がいる事を嫌がらなくてよかった。
ふう君といると凄く楽しい、僕にできる事は何でもしてあげたい。
これから毎日逢えると思うと、嬉しくて授業が終わるとすぐに帰って病室へ向かった。
ふう君は僕が来るのを楽しみにしているよって看護師さんが言っていた。
それだけで嬉しくなる。
そんな時ふう君が退院したら施設に行くってお父さんから聞いた。
ふう君がまたどこかで一人になるのかと思うと、ショックで声も出ないほど驚いた。
養護施設がどんなところかは知らないけど、知らない人の中で暮らすのかと思うと、ふう君が可愛そうで、家で一緒に暮らしたいと泣きながら頼んだ。
一人ぼっちで泣くふう君の顔が浮かんだ。
僕の願いをお父さんが聞いてくれた、弁護士さんや役所の人と話をして、ふう君が家族として一緒に住むことになった。
もう二度と一人ぼっちで部屋いることも、食べ物や飲み物がなくなることはない。
僕がずっと側にいてふう君を守ると決めた。
僕の部屋の隣がふう君の部屋、元いた部屋にお父さんが行ってみたら、机もかばんも無く教科書もなかったと言った。
服もほとんどなく靴もなかった、あの部屋から一度も出たことがなかったのだろうか。
あの部屋にはふう君が生きていた証が見つからなかったとお父さんから聞いて、また涙がでた。
ふう君が生きていてよかった。
ふう君の部屋に机とカバンと教科書を用意する、洋服も新しいのと僕のおさがりもクローゼットに入れた。
靴も2足僕とおそろいのスニーカーも買った。
お風呂やトイレも教えてあげたい、後は・・・・・学校も転校することになった。
と言っても今まで学校へ行っていなかったんだから、転校って言うのも変だけど・・・・・
新しい小学校は僕の行ってた学校だからふう君も安心して通える。
ふう君の部屋にはベッドも用意してあるけど、一人になるのはきっとまだ怖いだろうから、僕のベッドで一緒に寝るつもり。
ふう君の退院まであともう少し・・・・・・
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