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渢君の勉強と始めての美容院(龍之介)
渢君が新学期から小学校に行くことになった、でも今まで一回も学校へ行ったことがないから字も書けないし本も読めない。
このままで学校へ行ってもきっと虐められるし、渢君だって楽しくない、春休みの間に5年生として恥ずかしくないように、僕が勉強を教えることにした。
始めは絵本を読んであげて、字に興味を持ったら次は自分の名前を書いてみる。
漢字とひらがなと両方覚えて、僕の名前もお父さんの名前も春さんの名前も練習した。
ひらがなもカタカナも少しづつだけど、毎日練習をしてる。
春さんが良く頑張ったねって言って、シフォンケーキを作ってくれた。
僕も渢君もすごく嬉しかった、美味しそうに食べる渢君は本当に可愛い。
毎日勉強ばかりしてるけど、渢君は嫌がったりやめるって言ったりしない。
凄く頑張り屋さんなんだ。
お父さんにも渢君に勉強を教えていることは言ってある、お父さんもその事は心配してたって言って、僕が教えていることを知って喜んでくれた。
渢君が行く学校は男子校で小学校から高校まで同じ場所にあるから、何かあっても僕が居るから安心だって言われた。
勉強が終わって晩ご飯を食べて、お風呂に入った時渢君の髪が伸びて女の子みたいになってた、美容院へ連れて行きたいって言ったら春さんが明日僕と一緒に行ってくれることになった。
渢君は始めての美容院だ、短く切ったらどんなになるか楽しみ。
夜はベッドで渢君が寝るまで本を読んであげる、絵本は全部読んだから今は本を読んであげる、渢君は本が面白くてなかなか寝ない。
僕もそんなに楽しそうにしてくれると、読むのをやめられなくてずっと読んでると渢君より先に僕が寝てしまったりすることもある。
次の日朝ご飯が終わったら、渢君の服を選んで靴は僕とお揃いのスニーカーを履いて、春さんと3人で美容院へ行った。
いつも行ってる美容院だけど渢君を連れて行くのは始めてだ、美容院の人が一斉に渢君を見てる、皆が小さな声で「ワァ―可愛い」「色が白くてお人形さんみたい」「ほんと綺麗ね」って言ってるのが聞こえてきた。
渢君を見てそんな事言われるのは嫌だ、可愛いのも色が白いのも知ってるけど、他人が渢君の事を言うのが嫌だ。
春さんに言ったら「渢君が可愛いから言ってるだけよ」って笑ってる。
誰にも渢君を見せたくない・・・・・今度から僕が渢君の髪を切ってあげようかな。
カットが終わって短い髪の渢君を見たら、前よりもっと可愛くなって美容院の人たちがまたなんか言ってた。
渢君を見る美容院の人たちってどうしてあんなに渢君を見てるんだろう、可愛いのは分かってるけど、そんなに見るなって言いたい。
美容院を出てお昼はパスタを食べに行った、お店で食べるのは久しぶり。
渢君は始めてパスタを食べたって言って、少しづつ口に入れて食べるからもっといっぱい食べていいよって言ったら、口いっぱいにパスタを入れて食べた。
そう言えば渢君は保護されるまで、メロンパンだけを一口づつ食べてたって言ってた、だから今でも少しづつしか食べないんだ・・・・・
渢君が口いっぱいにパスタを入れて食べてるのを見たら、なんだかすごく胸が苦しくなって涙が出てきた。
春さんを見たら同じように涙ぐんでて、渢君がどうしたのって顔してたから、口に入れ過ぎた渢君の顔が可笑しくて涙が出たって言って誤魔化した。
渢君もっといっぱい食べていいよ、これからまだまだ始めて食べるものがいっぱいあるからねって、僕は心の中で渢くん言った。
ランチが終わって家で春さんがおやつのクッキーを出してくれた、ナッツのいっぱい入ったクッキーは僕の大好物、渢君も気に入ったみたいでいくつも食べてた。
おやつを食べたら、今日は4年生の勉強をする。
渢君はひらがなもすぐに覚えて漢字も少しづつ書けるようになった、1年生の勉強はすぐに終わって2年生も3年生も終わった、渢君は覚えるのが早くて一回教えると忘れない、九九もすぐに言えるようになった。
これなら学校へ行っても大丈夫、すぐにみんなに追いつくだろう。
渢君が今まで学校へ行ってなかったって嘘みたい、あと少しで4年生の勉強が終わる、後3日で新学期だ。
夜お父さんが帰ってきて晩ご飯を食べるとき、髪を切った渢君を見て・・・・
「渢君髪切ったんだね、すごく良く似合ってるね」
「はい龍之介君と春さんと一緒に美容院へ行ってきました。帰りにパスタも食べました。凄くおいしかったです」
「そうそれはよかった」
「孝太郎さんもパスタ食べたことありますか?」
「あるよ、私もパスタは大好きだよ」
「今度一緒に行きましょう」
「そうだね、4人で食べに行こうか」
「はい」
お父さんが嬉しそうに渢君と話をしてた、今度本当に4人でパスタを食べに行きたいなぁ~。
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