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② シュナイドー公爵令息
月に一度。お茶会が開かれ、婚約者との交流が始まった。
完璧なマナーを心掛ける。借金があるのは我が家のほうだ。少しの弱みも見せられないと気負っていた。
が・・・。
ソルティン伯爵令嬢と向かい合う雰囲気は悪くなかった。
お茶会では無難な話を選び、相手も無難な返事しかしなかった。
・・・婚約が決まってから、すぐに公爵家から家庭教師が派遣されている。
公爵家夫人となるべく、ソルティン伯爵令嬢の教育はすでに始まっているのだ。
ひと月でこの所作なら素晴らしい。もともと学んでいたのだろうか?
彼女は、終始アルカイックスマイルで。
背筋はピンと伸びて。立ち居振る舞いもよかった。
公爵家夫人にふさわしくあろうとしてくれているのだろう。
心配したような高圧的な態度など、まるで見られなかった。
ソルティン伯爵令嬢もまた。政略結婚というものを理解しているのだ、とほっとした。
彼女とならうまくやっていけそうだ。
公爵夫人として社交をしてもらい、後嗣を産んでもらって。
あとはお互い愛人と過ごせばいい。
この先の結婚生活も。お互いを干渉せず普通に過ごしていけるだろう。
数度のお茶会を過ごし、婚約相手がソルティン伯爵令嬢で良かった、と思い始めていた。
・
婚約した頃、私は学園の1年生だった。
3年には、婚約者の兄が。伯爵家の嫡男が在籍していた。
学年が違うと校舎が違うので。ほとんど会うことはなかったが、それでも偶然門のところや馬車どまりで一緒になることがあった。
髪色も瞳の色も婚約者と同じで。少し可愛らしい容貌もよく似ていた。
違うのは、彼の眼は少し垂れていて。いつも人懐こい表情をしていることくらいだった。
はじめて言葉を交わした彼の印象は、人当たりがよく。非常に頭のいい男だというもの。
実際、学年首席だと後から知った。
いつも丁寧な態度で私に接してくれて。妹をよろしくと必ず口にしていた。
卒園後は、伯爵家の興した商会を手伝って。外国にもよく出かけているという。そんな生き方が、少し羨ましかった。
・
私は2学年へ進級した。
ソルティン伯爵令嬢は今年、学園へ入園してきたはずだが。
やはり学ぶ校舎が違うので。学園ではまったく顔を合わせなかった。
会うのは、公爵邸で開かれる毎月のお茶会でだけ。
・・・そろそろ、他家で開かれるお茶会にもふたりで出かけることになるかもしれないが・・・。
婚約者の教育の進み具合いで、母上が許可を出すだろう。
学園では、今までと変わらず。はとこと昼食をとったりしていた。
友人たちは、私とはとこが婚約していると思っていたが。肯定も否定もしなかった。
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