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龍宮
「わかったよ。そんなに両親からディスられるならボクはクレアさんの言う通り、婿養子になるよ」
観念して龍宮寺家の婿養子になるしかないようだ。
「そうね。ここにはチン太郎の居場所はないわ」
クレアに最後通告をされた。トドメをさされた感じだ。
「ンうゥ……」
思わずボクは両親から見放され唸ってしまった。
「実はな。龍宮寺家の方から莫大な結納金を戴いたんだ」
父親が苦しい胸のうちを明かした。
「え、莫大な結納金……?」
「そうよ。真太郎にはずっと隠していたけどウチは借金で火の車だったのよ」
「マジで?」
「でも多額の結納金で借金も返済できたし、全部、龍宮寺財閥のおかげなの」
「はァ……」なんだ。結局は金なのか。
「だから悪いな。真太郎」
父親も頭を下げた。
「いやボクの方こそお父さん、お母さん。今までありがとうございました」
取り敢えず畏まって礼を言った。
「ああァ、元気でな」
やはり父親も多少は感慨深いようだ。
「真太郎。辛くても頑張りなさい」
母親も感極まって涙ぐんでいた。
「うん、わかったよ」
龍宮寺の婿養子になれば、二度とこの家には戻って来れないかもしれない。
「さァ行きましょ。チン太郎」
クレアが腕を組んでボクを誘った。
「うん、でもボクの荷物は……」二階にボクの部屋がある。
「後で送ってあげるわ」母親が寂しそうに微笑んだ。
「そうよ。あとは新しく買えばいいでしょ」
クレアは肩をすくめ苦笑いを浮かべた。
「ン、そうだね……」
いつかは旅立たなければならないと思っていた。
けれどもこんなに早く我が家を旅立つとは考えてなかった。
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