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占い婚
「う、占いで……」
「フフ、占い婚よ」
「うッううゥ、占い婚ですって?」
マジか。
「ご覧なさい。『恋人』、『太陽』、『運命の輪』それに『世界』。こんなカードが出たらもう結婚する以外ないのよ」
彼女は机の上に一枚、一枚ボクにタロットカードを置いて見せた。
「いやァ、結婚する以外ないって」
ムチャクチャな論理だ。
「おわかりでしょう」
「全然わかりませんけど」
だいたいボクは占いなんて信じないし、ましてタロット占いなんてやった事もない。
「これはあり得ない確率なの。運命が私たち二人を結びつけたのよ」
けれども彼女は譲ろうとしない。
「はァ、そうなんですか」
なんとなく強引に押し切られた格好だ。
だがよくよく考えてみれば、そんな都合の良い話しなどあるはずがない。ボクは特別、モデルみたいに派手でカッコ良いワケではない。まして資産家一族の御曹司というワケでもないのだ。十人並みの地味なイケメンという程度だ。
アイドルみたいな令嬢からプロポーズされるなんて何か魂胆があるに違いない。
「ははァン、なるほどハニートラップか何かですよね」
どう考えても会った途端、どこかのお嬢様からプロポーズされるなんて腑に落ちない。
「ン、ハニートラップ?」
クレアは眉をひそめた。
「ええェ、それか、ドッキリでしょう。顔も知らない令嬢からプロポーズされるなんて、どう考えてもおかしいですよ」
ボクは辺りに隠しカメラがないか確かめた。
「フフゥン、そんなにキョロキョロしなくても大丈夫よ。モニタリングなんてしてないから」
「でも……」
「それにチン太郎をハニートラップに引っ掛けて、何かメリットがあると思ってるの?」
「いや、それは、ありませんけど」
確かに資産家の御曹司でもないボクを罠に引っ掛けたところでメリットなどないだろう。
「ウソでもドッキリでもないわ。さァ、行きましょ」
クレアは、本当の恋人のようにボクの腕に絡ませた。
「ううッ、行きましょって、どこへ?」
「そんなの決まっているでしょう。ご両親に挨拶するのよ」
「えェ、両親ってボクの?」
「もちろんそうよ。龍宮寺家へ婿養子になってもらうんだから挨拶くらいしないと」
「ボ、ボクが婿養子になるんですか」
「当たり前でしょう。龍宮寺家の跡継ぎはチン太郎に掛かっているんだから」
信じられないくらい急な展開だ。
「えッ、ちょっと待ってくださいよ」
いくら何でも話しがおかしい。
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