〈罪〉

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「あんただよね?私のノートに落書きしたの」  放課後の校舎裏。長い髪の間で揺れる瞳を、私は見つめる。 「教えてくれる?誰に頼まれたの?それとも、1人でやった?」  泣いたりしない、絶対に。  そう誓ったのは2年前だ。  私はもう違うのだ。泣いて蹲るだけだった、以前の私とは。  戦える力が、今の私にはある。 「ねえ、答えて」 「バカ」と書かれたページを突きつけると、彼女の顔色が変わった。 「何で…」  バレないとでも思ったのだろうか。私がバカだから。だとしたらバカはあんただ。 「ご、ごめんなさい…」  震える声で、彼女は言う。 「ま、間違えたの」 「間違えた?」  胸に呼び起こされるのは、苦い記憶だ。 「ごめんね、水谷さん。間違えちゃったの」  そう言って「あの子」は肩を震わせた。  私は見る。泥だらけになった自分の上履きを。それから、「もう許してやったらどうだ」と言わんばかりの担任の顔。そして、「あんなに謝ってるのに可哀想」と囁く同級生たちの目。  出せる答えは、一つしかなかった。 「ま、間違えちゃったなら、仕方ないよね」  ヘラヘラと笑いながら私はそう言った。それ以外に何が言えたというのか。たとえ分かっていたとしても。許された「あの子」が、勝ち誇ったように笑うことを。 「そう」  私はにっこりと笑う。 「じゃあさ、試してみる?本当に『間違えた』のかどうか」  本当は、力を使うつもりなどなかった。彼女が罪を認めたのならば。 「いいよね?本当にあなたが『間違えて』いたのなら、何も起こらないはずなんだから」  大きく息を吸い、私は叫ぶ。 『死ね!いじめる人間は、みんな!』  驚いたように彼女が口を開いた。  一瞬後、その口から血が溢れ出す。
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