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「可哀想に。青野さんはただ、ノートを忘れただけ。それなのにあなたに殺されるなんて」
「やめて…」
私は耳を塞ぐ。
これ以上何も言わないで。私を傷付けないで。私を、いじめないで。
「そうだ…」
先生は言った。この力が殺すのは、私が「いじめた」と信じる人間だと。
先生の手を、私は掴む。
『死んで先生!私をいじめるなら、死んで!』
真っ赤な血が、溢れ出していく。
私の口から。
「本当に困った子ね。何度も言ったでしょう。ちゃんと確認しなきゃって」
真っ暗になった世界に、先生の声が響く。
「真っ赤な嘘よ。その力が殺すのが『あなたがいじめたと信じる人間』なんて」
何を言っているのだろうか、先生は。
「これで証明されたわ。おそらく、あなたの力は人の『罪悪感』に反応している。あなたの言葉を聞いた人達の中で『理不尽かつ一方的に人を傷付けたという罪悪感』を抱える人間のみが、『いじめる人間』だと判断され、死へと導かれる。青野さんとあなたがそうなったのは、お互いに相手を傷付けたという罪悪感を抱いていたから。どう?当たっていると思わない?」
先生の声が、遠くなっていく。
「皮肉なものね。罪悪感を感じるような繊細な心の持ち主の方が、重い責を負う。だけど仕方ないわよね。そもそも世界は、そういう風に出来ているんだから」
寒い。凍えそうなほどに。
「残念ね。せっかくお友達が出来そうだったのに」
その時私は気付いた。私が本当に欲しかったもの。それは、こんな能力なんかじゃなく、友達だったのだという事に。
冷え切った頬を、温かい何かが伝っていく。
『水谷さん』
死んだはずの彼女が、私の名を呼んだ。
『ねえ、友達になってくれる?』
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