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部屋に入るとテーブルの上に何かがあった。近づき手に取ると、大事にしていた本の表紙がはずされ、その裏に走り書きがしてあった。
置き手紙だ。僕は唇を噛み締めながら、その表紙を持ちあげ、表と裏を交互に見た。
なんで、わざわざ、この本の表紙に……表紙を持つ手を振るわせながら、手紙を読んだ。
「俺は、殺された男の双子の弟だ。
兄からメッセージを受け取っていた。『二人組で強盗をした後、金を独り占めにした。金は誰にもわからないところに隠した。顔がそっくりなお前が強盗の相棒に狙われるかも知れない。気をつけろ』と。
兄が死んだことを知り、金を探していたんだ。
不動産屋にも行き、相棒と思われる幽霊が訪ねてくるところまではわかった。
そいつから聞き出そうと思っていたが、手間がはぶけた。
金の在処がわかれば、もうこの部屋に用はない。さらばだ」
屋根裏を覗いた。さっきまであった札束は、ひとつ残らずなくなっている。
僕は、何もない屋根裏を見つめ、ふっと気抜けしたように笑った。
ひょいとテーブルから降りると、おっさんが寝転んで本を読んでいた。
「おっさん、金を持って逃げたんじゃ?」
おっさんは振り向くとこう言った。
「今まで、弟がいたから出なかった。
これからは、よろしく頼む」
ぼくの頬がピクリとひきつった。
僕は頭を抱えた。
床に本が散らかっている。
どうやら、同じ性格のようだ。
了
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