事故物件

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「駅前で、こんなに綺麗な部屋がこの値段なの? もうここに決めちゃいます」  僕の言葉に不動産屋さんは、眉を寄せた。 「あの、先ほどから申しておりますが、ここは事故物件です。それがわかっていてのご決断でよろしいですか?」 「幽霊なんて存在しませんよ。僕は信じません」 「だといいのですが……男性が殺されたんです。リフォームしてすぐ入居された方も同じことをおっしゃっていました。でも、会社から帰ると本棚の本が部屋中に散乱していたり、幽霊が訪ねてきて勝手に上がり込んだりするそうで、真っ青な顔で解約にこられましたよ」 「ポルターガイスト現象か、本当にそんなことがあるのなら見てみたいね」  僕は、ちょっとかっこうをつけて、顎をしゃくってみせた。 「あなたの前にこの物件を見にきた人は話を聞いて震えて帰られましたよ」  僕は片方の口の端を上げながら「早く契約書を」とせかした。  引っ越しの荷物の搬入も終わり、本は本棚に、衣服はタンスへ、食器も食器棚へと配置も終わり畳の上で大の字になって寝た。ちょっと疲れた。
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