事故物件

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「出ていくも何も、俺はここで殺され、恨みでここに縛り付けられている。嫌なら、お前が出ていけよ」  僕は、強気に出た。 「僕が出ていったら、今みたいに本を読んだりできないんですよ。何もない部屋になるんだから」  とどめをさすかのように言い捨てた僕の顔を、おっさんはじっと見た。   「いや、あの生活に戻るのは嫌だ。俺と同棲してくれ」 もはや、おっさんは泣きそうな顔をしていた。 「家賃を全部払って、おっさんの幽霊と同棲するわけないでしょ」  僕は自信たっぷりに白い歯を見せた。  おっさんが鼻で笑う。 「家賃を全部払ってって偉そうに。誰が家賃を安くしたと思ってるんだ」 「それは、あなたが殺されたから」 「そうだろ、だからその安くなった分は、俺が払っているのと同じなんだ。だから、おれにも住む権利がある」  僕は小さくうなずいた。論破された。  そうして、おっさんとの同居が始まった。  僕も一度は使ってしまったが、同棲という言葉は二度と使うなと、おっさんに釘を刺しておいた。  ある夜、男が訪ねてきた。ドアを開けると男は「ちょっと失礼」と言って勝手にあがり、居間へと向かう。 「勝手に入らないでください」と後を追った。居間に着くと男はキョロキョロしだした。
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