事故物件

8/10
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「ご協力、ありがとうございました。飲酒運転の方は大丈夫でした。では、エンジンを止めて、車から鍵を持って降りてください」  僕は息をのんだ。 「飲酒運転の取り締まりでは?」 「はい、時々、サンダルをはいて運転をされている人がおられるので、確認です。かかとを覆っていないものは違反ですからね。車の鍵を持って降りてください」  なぜ鍵を? と思ったが、きちんと靴を履いていた僕は、堂々と車を降りた。降りるとすぐに警官はドアと僕の間に割って入った。 「トランクをその鍵で開けてください」  言葉の意味を理解した。この警官は僕の挙動を不審に思い、逃走できないように車から降ろしたのだと。  トランクに向かいながら警官を見ると警棒に手をかけている。逃げる方法はないのかと、それでも考えながら、トランクの前に立った。  その時、後ろからヘッドライトに照らされた。  ゆっくり近づき止まったのはパトカーだった。  この警官はいつの間に、応援を呼んだんだ? いつから怪しいと思われていた? 背中に冷や汗が流れる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!