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信号の手前で止まっていたトラックが急に動き出したので、笹野は慌ててハンドルを切ったが間に合うはずもなく絵美の命を奪った。
自動車メーカーがその恐ろしい欠陥に気づき、リコールCMを準備し、必死で購入者に連絡しているときの事故だった。
あえて言うなら笹野が今朝家にスマホを忘れていなければリコールの事実を知り、この事故を避けられたかもしれない。
売れ行きのいい車だっただけに、すべての購入者に連絡がつく前の事故は避けられなかったのかもしれないと絵美は思った。
自動車メーカーにとっても予想外の欠陥だった。
きっちりと損害賠償はおこなわれたが、絵美の命は戻ってこない。
絵美はその一部始終を見ていた。
絵美自身は死んでしまったけれど、達也が無事だったから誰のことも恨んでいない。
人間は万能ではないから、そういうこともあるのだろうとあきらめるしかなかった。
もっと達也のそばにいたかったし、やりたいこともたくさんあったが、潔く死を受け入れた。
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