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絵美は笹野も大けがを負ったと聞いてむしろ心配になっていた。
生死の境をさまよったことにより一時的に見える人になっていた笹野は、そっと覗きに来た絵美の顔を見てパニックに陥った。
いい人すぎる絵美がお見舞いに顔を出しただけなのだが、笹野には恨んで化けて出たとしか思えなかった。
運が悪かったのだと絵美はもう納得済みだったが、笹野はそのことを知らない。
目が合ったことに気が付いた絵美は、死んでから初めての人との交流がうれしくなって、お大事にと声をかけた。
恐怖で目をつぶることさえできなくなっていた笹野に声は届かない。
読唇術なんてものももちろんできないから、笹野には絵美の言いたいことが伝わらない。
呪ってやると言われたに違いないと思い込んだ笹野は、病院のベッドで恐怖でおかしくなりそうだった。
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