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そうとは知らず絵美はちょくちょく顔を出した。
かわいい我が子でさえ側にいることに気づいてくれないので、コミュニケーションが取れているとはいいがたいその笹野との関係でも絵美にはうれしかったのだ。
身動きができず、声も出せない笹野に同情して、すこしでも退屈しのぎになればと考えた絵美は、休む間もなく話しかけ続けた。
まさか聞こえてないとは絵美は思いもしなかったので、怖がらせているとは露ほどにも思っていなかった。
ぶつかる瞬間の絵美の姿が目に焼き付いて離れない笹野は、目の前にいるのが絵美だと断言できる。
だが、見える姿は少しぼやけていて正確な表情までは読めない。
もしはっきり見えていれば絵美が恨んでないことに気づけたかもしれないが、残念ながらそうはならなかった。
笹野は動かない唇を震わせながら、成仏してくださいと祈り続けるのだった。
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