想定外の人事異動

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想定外の人事異動

一寸先は闇。 そんなことわざを身をもって実感したのは、就職してから一年を迎えようとしていた春のことだった。 私の名前は白石美月。 年齢は23歳。 見た目も中身も至って平凡な普通の女。 そんな平凡な私が勤める株式会社ライズは、国内の数あるスポーツチームやメーカーのエンブレム製作やグッズ製作、イベント企画などを手掛ける大手企業で、国外でもドイツやスペインなどにある有名企業ともたくさんの取引が行われている。 就職活動で苦戦する周囲を横目に、そんな大手企業から内定をもらえた時はなんだか夢を見ているようで。 一生分の運を使い果たしてしまったと言ってもいいくらい、私にとっては幸運な出来事だった。 とはいえ、広報部に海外事業部、企画制作部など数ある華やかな部署がある中でも、私が配属された場所はというと総務部の庶務一課というわりと地味な部署。 だけど、そんな地味な部署でも幸い優しい先輩たちに恵まれたおかげでスムーズに仕事には慣れることができたし、新入社員としてそれなりに一年間頑張ってこれたような気がしていた。 「白石、ちょっと」 …あんなことに、なるまでは。
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