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教卓の上に眼鏡が置かれていた。
教室は夕日色に染まっていて、誰もいない。
窓の外からは、部活に励む声が聞こえる。
時計を見ると、午後四時三十分過ぎ。
こんな時間まで学校にいたのは、職員室で副担任に、この前のテストで全教科赤点を取った理由を聞かれていたからだ。
今回は勉強不足だったと誤魔化しておいた。
さっさと鞄を持って家に帰りたいところだが、この忘れものを届けにいこう。
自分の机の横に掛けていた鞄を持ち、教卓の上にあった眼鏡を回収して教室を出た。
廊下にも誰もいない。
窓から夕日が差し込み、暖かそうなカーペットが床に出来ていた。
階段を降りて、職員室へ向かっていると、誰かがこっちに向かって歩いてくる。
「優也、まだ学校にいたの?」
歩いてきたのは、新人教師の木下明依先生。
俺のクラスの担任であり、義姉さんでもある。
親父の再婚で俺達は姉弟になった。
教師を目指していた義姉さんが、まさか担任になるとは…。
クラスの皆は、まだ俺達が姉弟ということを知らない。
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