第二話

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私達のフロア、三階担当の女性職員に連れられ、一階の面会室を目指す。 「ピッ」 脱獄防止のエレベーターのロックが解除される音。 一階に着くと、扉の開いた廊下から見慣れた顔が覗く。 「お母さーん!久しぶり!」 たか子は、心配気な表情を見せながら、持ち前の明るいテンションで声を掛けた。 「お久しぶりです。お元気でしたか」 暫く、老人と職員の顔しか見ていなかった私は、少し緊張した。 そもそも、家族にすら内向的な性格である。 「なんか仰々しいな。ずっと会いたかったんよ」 私は喋る方ではないが、たか子はほとんど一方的に近況と心配を伝えてくれた。 きっと多弁なのは、彼女の父(邦衛)に似たのだろう。 あぁ、お父さん(邦衛)はどうしているのだろう。
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