無口ポーカーフェイスと天才読心術遣いはバランスがいい

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 私、聡里(さとり)(こころ)は心が読める。  超能力とかじゃなくって、動きとか言葉の感じで何となく解ってしまう。  私はこの力が大嫌い!  素晴らしい能力?ふざけるな!目を背けても耳を塞いでもそれ(本音)が頭に浮かんでくる。人の本音と嘘が一緒に頭に流れてくる。その気持ち悪さが解るか?  中学生の頃、それを同級生に打ち明けた。『それはすごいね(気持ちが悪い)凄い才能だと思う(化け物じゃない)。』ってさ!心が読めるって気持ち悪いってさ!化け物だってさ!  嫌だった、私だって好きでこう(・・)なったんじゃない、もう嫌だ、捨てたい、人の心なんて見たくない……  高校生になり、中学までの知り合いの居ない場所で私が辿り着いたうまくやる方法。それは『誰とも話さない事』・『誰とも近付かない事』だった。  そうすれば本音と嘘で頭の中を掻き回される必要なんてない。  そんな私は大学に入って、少しだけ変わった気がする。  「待っててくれて有難う!」  彼は今日も私の講義が終わるのを図書館で待っててくれた。  「ああ。」  表情が全く動かない。無口。不愛想を絵に描いた様。それが不破瀬(ふわせ)(あたる)。  私の呪い(能力)は未だ治っていない。あの頃と何も変わっていない。  でも、この力があって良かったと思う事が今は一つだけある。  「何時も待たせてごめんね。」  「いい。」  表情は全く変わらない。短くそう言うだけ。傍から見たらどう考えても能君は怒っている様に見える。でも、私には彼の本音が解る。ちなみに、今の会話は……  「待っててくれて有難う。」  『ああ(気にする事は無い。)。』  「何時も待たせてごめんね。」  『(こんな暗い時間に一人で帰る事を想像して自宅で不安に駆られるよりもずっと)いい(それに君と一緒に歩く時間は何よりも楽しい)。』  だって!だってさ!すごい素敵でしょ?私の彼!  『無口で能面顔の奴がいる。』  そんな噂を聞いていた。でも彼に出会ったのは偶々(たまたま)だった。  「止せ。(その道は夜女性一人で通るのは危険だ)」  私が道に迷いかけていた時に能面顔の彼は私の肩を掴んで止めた。私はいつも通り心を読んだ。彼は私の事を心配していた。  「……有難う御座います。」  「礼は不要だ。(伝わって良かった。)」  それが出会い。  同じ大学だと知って、何度か講義で出くわして、何度も話している内に…好きになっていた。  誰とも話していない、誰とも近付かずに生きようとしていた私にとって、告白なんて真似が出来たのは奇跡に近かった。  「私と、付き合って、下さい!」  「承知(無口で仏頂面な私でよければ。)。」
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