6.Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)

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 翌年、母は再婚して私の苗字は木原(きはら)舞に変わった。  弟や妹が生まれ家族が増え、私は一生懸命弟妹の世話をした。  でも狭い家には小さな弟や妹の泣き声、義父の怒鳴り声、母の愚痴が渦巻いていた。そして兄弟の数が増えるたび、私の居場所はなくなっていった。  高校を卒業すると地元の会社に就職して家を出たが、仕送りを要求された。仕送りと一人暮らしで精一杯で、お洒落をする余裕もなかった。  王子のライブは駅前のポスターで知った。若王子という名前とピアノと、あのポスターの綺麗な横顔を見たら、幼い頃に出会ったあの人だと確信した。  行くべきか迷った。会っても覚えてくれているとは思えなかった。それに、ジャズバーなんて行ったことなかった。おしゃれな服だって持っていない。  でも、一目でいいから、会ってみたいと思った。出待ちをして、遠くからちらっと見られたらいいかなって……。  それなのに、いつも通るとてもお洒落なセレクトショップのショーウィンドーをのぞいていた。もし行くのならどんな洋服がいいのかなんて夢見ながら……。  するとショップの素敵な女性が声をかけてくれ、あれよあれよと言う間に変身させてくれた。  白雪姫じゃなくて、まるでシンデレラになった気分だった。
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