0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
それは事実だ。
理紗子は辺りを見回す。
やはり、人の気配はなかった。
理紗子がテディベアを抱いて店内に戻ると、マスターがコーヒーを飲んでいた。
それから理紗子が抱いているテディベアに気がつくと、少し驚いたように目を開く。
「どうしたんだ。それ」
訊かれて理紗子は答える。
「外にあったんです。汚れている様子もないですし、捨てられたんじゃなくて忘れ物かもしれませんね」
理紗子の言葉を聞いて、マスターは納得するようにうなずいた。
店の外にあったのなら、探しに来るかも知れない。
理紗子とマスターは話し合うと、通りに面した窓際にテディベアを座らせることにした。
これで持ち主も見つけやすいだろう。
だが、その日は結局、誰もテディベアのことで尋ねて来る人は居なかった。
◆
最初のコメントを投稿しよう!