忘れられたテディベア

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 それは事実だ。  理紗子は辺りを見回す。  やはり、人の気配はなかった。  理紗子がテディベアを抱いて店内に戻ると、マスターがコーヒーを飲んでいた。  それから理紗子が抱いているテディベアに気がつくと、少し驚いたように目を開く。 「どうしたんだ。それ」  訊かれて理紗子は答える。 「外にあったんです。汚れている様子もないですし、捨てられたんじゃなくて忘れ物かもしれませんね」  理紗子の言葉を聞いて、マスターは納得するようにうなずいた。  店の外にあったのなら、探しに来るかも知れない。  理紗子とマスターは話し合うと、通りに面した窓際にテディベアを座らせることにした。  これで持ち主も見つけやすいだろう。  だが、その日は結局、誰もテディベアのことで尋ねて来る人は居なかった。  ◆
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