忘れられたテディベア

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 あれから数日が経過していた。  理紗子はマスターから、気遣いを受ける。 「安さん。大丈夫?」  訊かれて、理紗子は返事をする。少々、動揺が入っている。  あの事故の後、救急車が呼ばれ、二人は病院に運ばれたが、幸いにも命に別状はなかった。  しかし、男性は今も入院中だという。  女性は軽い脳震盪を起こしていたが、こちらも意識がはっきりしており、大事には至らなかった。  不幸中の幸いだ。  命が助かって、本当に良かったと思う。  けれど、一つ気になることがあった。  それはテディベアのことだ。  理紗子が救急車でカップルが運ばれ、お店へと戻るとテディベアは窓ガラスに顔面を押し当てた状態になっていたのだ。  確か、テーブルの上に置いた状態にしておいたのにだ。  あれはまるで……。  事故を眺める為に動いたような……?  理紗子は考え過ぎだと自分に言い聞かせた。  そして、いつも通り店番をして過ごしていた。  お客が居ないときにマスターが言う。 「実は、先日話しにあがったショッピングモールでのことなんだが、あの後、僕は気になって調べてみたんだよ。そうしたら、変なことがあってね」  マスターは語り出す。  毎日のようにショッピングモールでサイレンが鳴り響いていた件は、ネットでは話題となっていたそうだ。  原因不明のボヤ騒ぎ。  店内放送にラップ音が発生。  犯人不明の刃物による傷害事件。  などなどが、連日のように発生していたらしい。  だが、その数日後にはピタリと止んだという。  今では、すっかり静けさを取り戻しているようだ。  マスターの話を聞き、理紗子は背筋が寒くなる。  また近くの工事現場では、落ちていたテディベアを拾おうとしたそうだ。  しかし、そのときに上から鉄骨が降ってきて、慌てて逃げたという。  つまり、テディベアは偶然そこに落ちていたのではなく、誰かが意図的に落とした可能性が高いのだ。
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