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先週、梅雨明け宣言が出た二日後に、夏はいきなり本番を迎えた。
最高気温36℃の予報に、いつから体温より暑い国になったのか?と、山科楓は思わず声を出して突っ込んだものだ。最早、温暖湿潤気候の定義が危うい。
その酷暑が数日続いたあと、ようやく通常の夏の気温になり、鴨川デルタも賑わいを見せていた。
その日は土曜だったが、楓は朝から研究室に詰めていた。先週は少し早い夏休みだったので、その分を取り返す労働中である。
妙な時期の休暇は、球宴には呼ばれなかった大家が少し残念そうに帰省してきたからで、一方の楓は願ったり叶ったりだ。相応に年も取ったので、若い頃のように四六時中、睦み合うこともないが、それはそれで久々の蜜月である。
なのに、祇園祭でもなく滋賀大会三回戦と京都大会二回戦を見に行くあたり(高校野球の話だ)どうかしている。
それでも大家が眩しそうに球児達を見るので、休暇の意味はあるのだろうとも思った。ただ、あまりの暑さに楓も既に夏バテ気味ではある。真っ昼間のあの気温の野外で高校生に運動をさせるとか、そろそろ狂気の沙汰であろう。
高●連に意見書でも送るかと、楓は半分真剣に検討しながら文献検索でヒットした論文をプリントしていた。
それにしても、プリンタが唸る以外の物音がしない。
本当に珍しく津川研はほぼ無人だった。
梅雨明けの開放感もあるだろうし、そもそも大学も既に夏季休暇期間ではあるので、院生や四年生達も土日は必要に応じて三々五々、顔を出す程度だ。
とはいえ、この暑さだと下宿で悶々とするより冷房のある研究室で仕事をする方がマシ、という輩も多いのだが。
それでも、午後からはボスの津川教授も顔を出すはずだ。今日から一週間ほど来日する共同研究者を案内するとかで、この湿度MAXの暑さに外国人が耐えられるだろうかと気を揉んでいた。
それに関しては客人に努力してもらうしかない。と、楓が思い返していると、
電話が鳴った。
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