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ことの始まり
物すごく気分が盛り上がっている時に書いたラブレターを落とした。このショックがわかるだろうか。
この事件が起きたのは高校一年生になった春先のことだった。私は幼馴染であり、片思いの相手である圭司と同じ高校に行けることになってすごく浮かれていた。
私はあまり頭が良くないから彼と同じ高校に行くために、死に物狂いで勉強をしたのだ。だから、まあ浮かれるのは許してほしい。
それで、まあ浮かれすぎて彼への気持ちの籠りまくったラブレターも書いてしまったのだ。そう、誰かに見られたら顔が真っ赤になって叫ぶしかないという物を…。
ちょっとだけ内容を見せるとこんな感じだ。
「初めて会った時から圭司は、私の運命の人だと思っていたの。同じ学校に行けた時は、神様っているんだなと感じたよ。私があなたのお姫さまになるから、あなたは私の王子様になってよ。」
いや、運命って何?お姫さまって?王子様って?
言っておくけれど、紹介したのはラブレターの文面の中でもマシな所だ。
普段はガサツな私がこんなラブレターを書いていることを知られたら、一生引きこもるしかない。
渡す気にもなれず、かといって破いて捨てるのもなんとなく嫌、そのまま捨てて万が一家族に見られるのも嫌。
だから、遠い場所で捨てようと思ってカバンに入れていたのに…。
カバンの中のどこにもないのである。
これはもうどこかで落としたとしか考えられない。
死に物狂いでよくない頭で考えて、ふと図書館じゃないかと思い付いた。
あそこでこのカバンを持って、勉強したときに落としたのかも知れない。
そこから私は大慌てで家を出た。
誰かに拾われて中身を見られたらと思うと頭を抱えたくなった。
こんなことなら素直に家でビリビリにやぶいて捨てればよかった。
そうして、辿り着いた図書館の入り口の所には圭司がいた。
絶対に会いたくなった人物に、思わずクラクラしてしまった。
おまけに、奴は手に私の書いたラブレターを持っていたのだ。
「み、み、み、み、み、」
顔が熱い。
言葉が出てこない。
圭司が困った顔をしている。
ああ、もうダメだ。
そうして、圭司は口を開いた。
「うん。俺は未来から来たんだ。」
はあ?
あんまりに予想外の言葉をもらって、私は唖然としてしまった。
「そんなの信じられるかー!ごまかすにしても、もっとマシな嘘を吐けば!」
そう言うと、私はむしり取るようにして、ラブレターを奪うと回れ右をして走って逃げだしたのだった。
「俺は嘘を吐いていない!その証拠に明日は大雨で、お前の担任は事故に巻き込まれて休みになる!」
そんな私に圭司は大声でそんな言葉を掛けたのだった。
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