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衝撃的な話
「いや、俺は好きだったんだ。」
圭司がいきなりそんなことを言うから、胸が飛び跳ねた。
「な、なにが?」
ここでカレーが好きだったんだよねとか言われたら締めたくなるぞ。
「君が。」
顔が赤くなるのを感じる。
何と言っていいかもわからない。
「でも、すごく悪いことしちゃってさ。」
ダメにしたってなんだろう。
「ひょっとして、なにかあったの?」
ちょっと先のことを聞くのが怖くなりながら、質問をしたら圭司はちょっと悲しそうな顔をして答えてくれた。
「うん。前もこの図書館で君の書いたラブレターを拾ったんだ。それで、明らかに君の字だし、それで悪いかなと思いつつ、中身を見たわけ。そうしたら…。」
「わかった。変にからかうような言葉を言って怒らせたんでしょ。」
幼馴染なだけあって、この男の性格は把握していた。
彼には変な所で茶化してしまう癖があった。
「でも、そんなの謝ればいいじゃん。本気でごめんって言われたら、話は聞くと思うよ?」
「うん。それはそう思う。でも、それはできなかったんだ。」
圭司はすごく苦しそうな顔をした。
ちゃんと話し合おうって約束した日に、君が事故にあって病院のベッドで眠りっぱなしになったから。
クラスの先生の次に私。
うちのクラスはお祓いでもした方がいいんじゃないだろうか。
現実逃避気味にそんなことを思った。
「自己満足で終わるかも知れなくても、きちんと伝えたかったんだ。君のラブレターが嬉しかったこと。それから、同じ高校に通って恋人同士として過ごし語ったこと。それから、事故のあった1週間後には駅前には近寄らないようにすること。」
圭司が今まで見たことがないぐらい真剣な顔で頼んでくるから、思わず私は分かったと言ってしまった。そりゃ、圭司には質が悪いところはあるけれど、こんなひどい嘘を吐くやつじゃないのだ。
未来から来たという圭司にこれ以上なにを言えばいいんだろう。
思わず、足元を見て俯いてしまった。
ここまでしてくれてありがとう?
こっちの私もこっちの圭司が大好きだよ?
ちょっと無神経すぎない?
「あ、あの」
いつまでも迷っていても仕方がない。
そう思って顔を上げると、圭司はどこにもいなかった。
幾ら周りを探しても見当たらなくて、未来から来たという圭司は煙のように消えてしまった。
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