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ダストボックスは王様ベッドと壁の間だ。もう何度も来ているから知っている。
のそのそとベッドに移動したら、ピンクパネルに表示された『9:15AM』が目に入った。今日は平日、健全な世の中はそろそろ社畜し始めた頃だろう。
暦通りじゃない仕事をするあたしは休日で、幸せな夢の中だった。それをオニ電で起こしやがったのが、同じ休日のハムオ。いつも通り、暇だから遊ぼ、だ。
でも、遊ぶと言ったって、親友でも恋人でもないハムオとランデブーしたい場所なんて特に思いつかない。
仕方ないからゴートゥーヘブン。朝っぱらからこの四角い部屋にやって来た次第だ。レジャーホテルとも呼ぶらしいし、一応方向性は間違っていないか。いや、そんなわけない。
「あたしの足って全部巻き爪でさあ、すごい切りにくいんだよね」
パチン、パチン。流れる激しいビートの合間に、あたしが爪を切る音が響く。
「へえ。けど巻き爪って矯正できるよね?」
「うん。けど一本一万だよ? 十本十万」
「たっか!」
「でしょー。ムリムリ」
パチン、パチン。パチン。
「うー、頭ヒリヒリする。ハゲそう」
パチン。十本切り終えたあたしは、そのままゴロンと転がり、ハムオの方を向いた。
「そりゃ大変だね」
「ねえポコミン、もしハゲたら結婚してよ」
「うん、いいよー」
たんぽぽの綿毛くらい軽い会話は、あっという間に上空へと舞い上がっていく。
「よし、そろそろ落とそ」
「行ってらー」
ハムオがバスルームへと消えた。
あたしは仰向けになった。満天の星空が広がっていればいいなとか思ったけど、いつも通り何の変哲もないグレーの天井だった。
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