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「早いね、もう5年も経つんだね。」
煌びやかなイルミネーションに街は浮き足立っている。
こんなに寒いのに、行き交う人々はみんな笑顔だ。
私の横にいる彼も微笑んでいる。
そして、もちろんこの私も。
だけど、私のは作り笑い。
いや、クリスマスを大好きな彼と一緒に過ごしてるんだから、嬉しくないはずは無い。
だけど、私には心から笑えない理由があるのだ。
「紗夜…そろそろ結婚しないか?」
「えっ!?」
レストランでの突然のプロポーズに、私は驚き過ぎて何も言えなかった。
私は、樹生さんが好き。
昔からずっと。
その人にプロポーズされたんだ。
何も迷うことは無いはず。
なのに、素直に頷くことが出来ない。
「……嫌なの?」
「そ、そうじゃないよ。ただ、びっくりしただけ。」
「紗夜はおかしなこと言うね。
僕たち付き合ってるんだから、いずれは結婚するでしょ。
え?まさか、紗夜って、恋愛と結婚は別とか思ってるタイプ?」
「ま、まさか!
そんなわけないでしょ!」
それは、真実だ。
それに、私が樹生さんのことを愛していることも。
ただ、私は怖いんだ。
だって、私は偽物なんだから…
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