月も輝く

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樹生さんは、私の双子の姉、伽耶の恋人だった。 その伽耶が、急な事故で逝ってしまったのが5年前。 樹生さんの悲しみは、実の妹の私よりもなお深いものだった。 見ているだけでも辛くて胸が傷んだ。 私と伽耶は、双子とは言っても、そんなには似ていなかった。 明るくて華やかで、誰からも好かれるタイプの伽耶は、服装も派手だったし、髪も染めていた。 伽耶が太陽だとしたら、私は月。 地味で何に対しても消極的な私は、友達も少なかったし、彼氏もいなかった。 家に遊びに来る樹生さんには、憧れのような気持ちを抱いていた。 伽耶の隣でいつも楽しそうにしてた樹生さんの焦燥しきった姿を見て、私はなんとか樹生さんを元気付けたくなった。 私は、美容院に行き、髪を染め、パーマをあてた。 髪を染めたのも、パーマをあてたのも初めてのことだった。 そして、伽耶の着ていた服を着た。 「伽耶……」 樹生さんは、戸惑いながらも、私の姿に喜んでくれたみたいだった。 それをきっかけに、私たちは良く会うようになった。 私は伽耶を見習い、無理をしながら明るく振る舞い、樹生さんもそれに応えるかのように、少しずつ、元気を取り戻してくれた。 私はそれが嬉しくてたまらなかった。 その反面、私はなにか悪いことをしているような罪悪感をも感じていた。
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