月も輝く

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(もう駄目だ…) 私は涙を拭き、真実を話す決意をした。 樹生さんと別れるのは辛いけど、捨てられるよりはまだマシだ。 「樹生さん…ごめんなさい。 実はね……」 私は全てを話した。 喋りながら、また涙が込み上げてきたけれど、それでもなんとか話しきった。 「紗夜…君はそんなことを…」 嫌われた。もうおしまいだ。 「……馬鹿だな。」 樹生さんは、私の涙を指で拭った。 「そりゃあ、最初は君に伽耶の面影を見ていたかもしれない。 でも、付き合ううちに、君と伽耶が別の人間だってよくわかった。 見た目はそっくりでも、君たちは中身が全然違うよ。」 「え……で、でも、私…性格も伽耶に似せて…」 「そうなの?でも、僕には全然違うように思えたよ。」 どういうこと? 伽耶に似てなくても良いってこと? 「伽耶のことは大好きだったけど、僕が今好きなのは伽耶じゃない。間違いなく紗夜だよ。 君がいてくれたから、僕は伽耶の死を乗り越えることが出来たんだ。」 「で、でも、私……」 混乱して、言葉が出て来ない。 「僕は、ずっと伽耶のことは忘れないけど、これから愛するのは紗夜、君だよ。 それじゃ駄目かな?」 嬉しくてまた涙が零れた。 「よ、よろしくお願いします。」 「こちらこそ、よろしくね。」 まだ半信半疑だけど、今夜は最高のクリスマスになった。 もう伽耶の振りをしなくて良いんだね。 「あ、ちょっと冷めちゃったけど、美味しいよ。」 そう言ってステーキを頬張る樹生さんに、思わず笑みが零れた。
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