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※
揶揄う意味で仔猫と呼ばれたはずが――今は本物の猫になった気分だ。
ゆったりとした――ジムノペディのメロディを彩るささめく声。
柔らかな紅茶の香りと食器の奏でる音が心地よい夢のような空間。
(――どうしよう)
視線を逸らせた庭園に面した大きな窓。
降り注ぐ日差しは柔らかだがガラスの向こうは木枯らしが走り抜ける真冬の空。冬枯れの芝の向こうできらめく水面を錦鯉が波紋を揺らす。
木の葉のドレスを脱いだ木々は両手を広げて雲をつかみ取ろうと枝を揺すって、空の高みで鳴く笛の音をピアノの生演奏が優しく覆い隠す。
律は銀のフレームのケーキスタンドに綺麗に盛り付けられた一口サイズのスイーツを前に落ち着かない。
場所はジルの泊まるホテルのラウンジ。
千秋経由で「アフタヌーンティを楽しみましょ」と誘われたのはいいが傍目にもわかるほど緊張している。
(こんな場所、来たことない……!)
甘いものは大好きだ。なのに美味しいはずのスイーツの味も分からない。
隣から聞こえる英語に華奢な肩をすぼませる。
「リラックス、リツ」
琥珀色を満たした磁器のカップを手にジルが笑いかけるが、それは難しい。
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