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「ジルさんは大丈夫なんですか?」  日本に治療に来るなんて、かなり悪いのだろうか。  それとも残された時間が少なくてエマと千秋に会いに――だったら家族の時間を優先すべきだ。 「いや。タイミングが悪いだけで……あとは神だのみだな」 (やっぱり……!) 「僕がいると邪魔になりますよね」  ジルに甘えるエマの顔を思い出す。律はただの家政夫(ハウスキーパ)で家族ではない。 「律?」 「エマちゃんだって小さいし。ジルさんも大変だろうけど家族の時間を優先した方がいいですって」  千秋を気遣うつもりがまるで別れ話のよう。 「絶対に後悔しないようにしたほうがいいです」  良かれと思って念押しする言葉は、どう受け取っているだろう。 「……そうかもしれないね」  肯定の声に律の中で黒い感情が沸きあがって――蓋をする。 (大丈夫、慣れてる)  奥歯を噛んで唱えるのは、言葉の絆創膏。  傷は治らないけれど、張り付ければ見えなくなる。
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