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「どうしてチョコレートを作りたいの?」
「たーくさん作って、サンタさんみたいにみんなに配るの!」
律の声にはちみつ色の髪の毛を揺らして機嫌よく教えてくれた。
それは世間で流行っている『友チョコ』だろう。
さっそく周囲の影響を受けてきたらしい。
「保育園のお友達にお菓子は……ダメかな」
「だめ?」
諦めきれないのか未練がましく問い返す。
ここは大人がルールをちゃんと教えておかなければいけない。
「だめ。保育園は遊びに行く場所じゃないからお菓子は持って行っちゃダメなんだ。もしお友達にプレゼントしたいのならお手紙を書いてあげるほうがいいんじゃないかな」
「……お手紙嫌い。ほかの物にする」
手紙、というかひらがなが苦手だ。小学校に入るまでに書けないのは困るだろうと英恵にやらされている。
「今日のドリルを終わらせたら、買い物に行こうか」
ドーナツとミルクをトレイに載せてリビングに戻ると嫌そうに動きを止めた。手元には一向に片付かない幼児ドリル。
ここは――譲れない。
「…………」
エマは口を尖らせて、鉛筆と律を見比べる。
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