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やる気を出させるために可愛い便せんも購入した。
晩御飯の食材と一緒に購入したのはキノコ形のチョコレートが作れるキット。もちろん明日のエマのおやつの予定だ。
ちゃんと作れたら一つか二つは千秋にも届くかもしれない。
(明日のおやつは食育、かな)
※
木枯らしが走り抜ける空は青みがかったミルク色。
寒さが緩んだ昼下がり、加湿器が大活躍する小柳家に台風が襲来した。
あたたかな南の海からではなく――フランスから飛行機に乗って。
「愛してる、チアキ」
甲高い声で玄関に来客を出迎えた千秋の首に抱き着くと、頬や唇に息をつく間もないほどの口づけの雨を降らせた。
コートを羽織った黒いスーツの女性。背中で広がるはちみつ色の巻き毛。長い睫毛に彩られた空色の目にふっくらとしたピンクの唇。
「いらっしゃい、ジル」
返事を喉へ流しいれるようなジルの口づけは見ている目のやりどころに困る。耳まで赤く染まって視線を逸らすぐらいしかできない。
「長旅で疲れてない?」
「ヘイキ」
短い会話の間を口づけて埋めて、リビングまでの短い廊下で熱いキスシーンを見せつけられて――言葉がない。
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