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スノームーン
灰色の空を小雪混じりの寒風が渦を巻いて駆け抜ける。
クリスマスと正月を賑やかに過ごして、節分の豆まきを済ませた。
それでも二月にはまだやり残したイベントがある――。
「日本のバレンタインは女の子がチョコレートをプレゼントするって本当?」
今日のエマはダイニングで文字の幼児ドリルの真っ最中。
慣れない勉強に飽きて、鉛筆を放り出したところだ。
「うん。そうだよ」
問われた律はキッチンでおやつのドーナツを皿にのせながら当然のように答えた。とたん、エマの眉が寄る――なにか変なことを言っただろうか。
「フランスにバレンタインデーってないの?」
「あるけど、男の子からお花をプレゼントしてもらえる日だと思ってた」
つまらなそうに頬杖をついて口を尖らせる。
バレンタインに花――チョコレートよりおしゃれな気がする。
(……っていうか男女、逆なんだ)
「リツ、チョコレートってどうやって作るの? お砂糖いっぱい入れてお鍋で煮るの?」
「それはカラメルかべっこう飴だね。お菓子は得意じゃないけど……チョコレートを湯煎で溶かして型に入れるだけだから、エマちゃんにもできるんじゃないかな」
「ほんと?」
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