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「しばらくこの景色は見れないな」 と源が川を見ながら言うと、 「戻ってきたらまた見れるじゃないか」 と又は言った。 小さい頃は、 (早く戦に出たい) と思っていた源だが、 戦で亡くなった者 大怪我をして戻ってきた者 の話を聞いているうちに (戦に出たい) という気持ちが失せていった。 「そうだな」 と源は、 (戦に行きたくない) という気持ちを悟られないように立ち上がって言い、 「じゃあ、又」 と歩き始める。 「じゃあ、源」 と言う又の声を聞きながら、後ろを振り返らず右手を挙げた。 翌朝、水を浴びていると父が畑仕事に行くところだったので、 「今日から戦に行ってくる」 と源が声をかけると、 「そうか」 と一言だけ言って歩いていった。 水浴びを終え、部屋にいた母に、 「じゃあ、行ってくる」 と言うと、 「必ず生きて帰ってくるんだよ」 と繕いをしていた手を止め、源を見て言った。 「分かった」 と源は短く答えて、外に出た。 (もう見ることできないかもしれない) と源は思い、家を隅から隅までじっと見て、周りの景色もゆっくり眺め目に焼き付けた。
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