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「お館様の軍だ」 さっき木に登っていった又の声が頭上から聞こえる。 「本当か?」 弟達と川遊びしていた源は、急いで川から出て、又が登っていった川沿いにある桜の木に登っていく。 葉が生い茂っているが、慣れた動きで又が座っている太い枝の近くの太い枝まですぐ登っていった。 「おー」 と源は、枝に座って先に見える人の列を眺めながら声をあげた。 ここからでも 馬のいななく声 日に当たって光る槍先 白い旗に書かれた「毘」の字 がよく見える。 「どこの悪者を退治に行くんだ?」 と源が言うと、 「甲斐だろう」 と又はすぐ答えた。 「早く戦に出たいな」 と源が言うと、 「そうだな」 と又は言ってから、 「源、稽古しよう」 と言って、木を降り始めた。 「分かった、又」 と源も言って、木を降りていった。 「いよいよ、明日だな」 と川の土手に座りながら又が言ったので、 「そうだな」 と隣りに座っている源が言うと、 「腕がなるな」 と又が右手を回しながら言った。 川の流れる景色は、小さい頃に見た景色と変わらない。 ただ川の流れが止まらないように源達は大きくなり、いよいよ明日上田長尾家の軍に入ることになった。
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