慶応の馬鹿さん

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慶応の馬鹿さん

ある日、父の所用で、N市に行った。二泊三日。もちろん継母も一緒に。 あれは、暑い夏の日だった。私は、初等部四年生。 N市の街中を、父と二人で歩いていると、向こうから、背の高い、白いスーツを着た男の人が歩いて来た。 すれ違ったその時 [ 先生! 先生じゃありませんか? ] [ え? ] [ 先生! 僕です。川崎の下町に下宿していた、慶応の馬鹿です。] [ え! あの慶応の、、] [ そうです。あの慶応の馬鹿です。] [ ご立派になられましたね! どうです お茶でも。] [ はい。のどが乾きましたから。お嬢さんは、相変わらず可愛いらしい。] 小さな喫茶店に入った。 [ それにしても、お懐かしい。すっかり変わられましたね。] 父は、泣きそうになっていた。 [ あれから僕は、先生がおっしゃった通り、本をたくさん読みました。教師の資格試験に合格しました。 最初は、田舎の高校に赴任しました。でも N高校の教師になりたかったんです。 N県では、一番ですから。そして、先生。僕は、来年からN高校の教師になるんです。 嬉しいなあ~。]と、誇らしく言った。
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