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「はぁ……まただ、『優しすぎるから』でフラれた……」
今まで数えきれないくらい女の子に「好き」を伝えて、同じ数だけ断られた。
それでもめげずに頑張って数ヶ月前に告白して、初めて成功して、お付き合いして。毎日が幸せでたまらないって感じだったのに、まさか今日大好きな彼女に同じ理由でフラれるという人生最大のショックが自分の身に降りかかるとは思ってもみなかったんだ。
「もうやだ……消えてしまいたい」
優しさが人間にとって一番大事で一番尊いものだと信じてやまなかった俺も、今夜ばかりはポジティブではいられない。
「あっ、蒼くん! 何モタモタしてるの? 早く行かないと彼女さんとの夜桜デートに間に合わなくなっちゃうよっ!!」
泣きそうになりながらその場で蹲っていると、健人さんがバックヤードの扉を開けて俺の肩をトントンと叩く。
「行かない事に決まったんです……」
「えっ?」
俺は床に向かって声をそう搾り出す。
「2時間前に、彼女からメッセージ届いてて、今スマホでそれを知って」
「え? 2時間前って、蒼くんバリバリ働いてた時間じゃん」
「はい……俺から返信来ないの分かってて送ってきたんですよ『優しすぎてつまらないから別れよう』って」
「ええぇぇぇ??!」
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