Chapter2:御礼ランチ

2/19

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/693ページ
「失恋したばっかじゃぁあん! 蒼くんどうしたの? 何があったのあれから!」 「べっ……別に何もないですよっ! デートっていうか、食事するだけです」  冷静を装うとするものの、なんか声が上擦って 「ふぅ~ん……どこで食事すんの?」  余計に健人さんに悪絡みされる。 「…………『jolie mante(ジョリー・マント)』です。お得意さんの」  こういう時は嘘をついたって仕方がないので正直に店名を伝えた。 「えー?! 近所じゃん!! しかもこれから配達に行くよね?!」  健人さんが驚きと喜びを合わせたような声を出したのも無理はない。 「はい……そうです。今から俺が配達に行く『jolie mante(ジョリー・マント)』で、憧れのエビグラタンでも食べようかなって」  あのコンビニ店長さんが口に出した『jolie mante(ジョリー・マント)』は『フラワーショップ田上』からアーケードを真っ直ぐ通った先に位置する洋食店で、店内に飾られている花は毎週土曜日の朝に俺が配達を担当している。  確かにその店はエビグラタンが絶品との噂で、いつか客として行こう行こうと思っているうちにズルズルと先延ばしになり、この4年半一度も食べられずにいた憧れの店だったんだ。
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加