Chapter2:御礼ランチ

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(いい匂いがしたなぁ……あれは桜並木からの香りが風に乗ってきてただけなのかな)  健人さんは「桜にはパワーがある」と言っていた。実際桜の花や葉には人を朗らかにさせる効果があるらしい。   (華子さんにとっては怖い思いをした瞬間ではあったけど、俺にとっては……)  こんな事を思ったら華子さんに嫌われてしまうだろうか?  俺はあの時華子さんを救えて良かったと思ったし何より出会えたのは運命なんじゃないかとさえ思っていた。 (華子さんの、におい…………)  それもあって余計に、可愛らしい声で名を名乗った時に俺の鼻腔を刺激したのは桜の香りなんじゃなくて…… (いい匂いだったな…………)  華子さんの可愛らしい匂いなんだって、そう思い込みたかったのかもしれない。   「あ」  ぼんやりしていたら、向こう側からふんわりとした長い赤髪を揺らし春らしい軽やかなワンピースを身に纏った女の子が近付いてきた。 「華子さんだ」  三つ編みではなかったし服装もガラッと変わっていたけれど、華子さんである事は明確だった。 「あ、(あお)さんっ!」  だって俺を見つけるなり小走りで駆け寄ってきたし…… 「こんにちは、華子さん」 「すみませんっ! 遅刻しちゃいましたか?」 「いえ、時間ピッタリです」 「お待たせしてしまいましたか?」 「俺もさっき来たところだから大丈夫」  息を切らしながら目の前に立ってくれた時、とってもいい匂いがしたから。
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