Chapter2:御礼ランチ

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*  スマホで時刻を確認すると、12時50分。   「やばっ!」  駅までまだまだ距離があるのに、ゆっくり歩き過ぎてしまった。 「遅刻は絶対にダメっ……!!」  私のお父さんは時間厳守にうるさい人だったから、「遅れるかも」と思うとお父さんに叱られるような気分になり、余計に焦る。 「急がなきゃ」  サカサカとスピードをあげて歩いていき、前方に20代の男性らしきシルエットを発見すると 「もう来てる! 絶対に蒼さんだぁ」  叱られてはいけないと、駆け足になっていった。 「あ、蒼さんっ!」  急いで男性のところまで駆け寄り、丸眼鏡でハッキリと阪井蒼さんのお顔を捉えた時点で名前を呼び掛ける。 「こんにちは、華子さん」 (良かった……合ってた)  近視だから見間違いしてやしないかと思っていたけど、ちゃんと合っていたからホッとした。 「すみませんっ! 遅刻しちゃいましたか?」  私がハァハァと息を切らして謝っても 「いえ、時間ピッタリです」 (あの夜と同じ、優しい声とやわらかな笑顔だぁ……)  蒼さんは素敵な微笑みで返してくれたので嬉しくなる。
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