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「なんなんだろうねぇ、今日は夜桜するには一番ベストなのにね」
「…………ぅ」
そう、今日は絶好の夜桜見物日和。
だから彼女とこれから人気の桜スポットへ出掛けて帰り道でムードたっぷりなキスをしようって……そんな計画を密かに立てていたんだ。
「今日、蒼くんが行こうとしてた場所の桜だって、蒼くん達を優しく迎え入れてさぁ……優しい香りで包んであげて、幸せな気持ちにさせてあげようって思ってたんじゃないかな」
「ううぅ……」
俺は悲しさが溢れてしまって、その場でガチ泣きしてしまった。
(こんなところで泣いちゃいけないのに……健人さんだってこの後やる事いっぱいあるし、奥さんも美優ちゃん奏斗くんもお家で待っているのに)
健人さんには家族がいる。しかも息子の奏斗くんはまだ赤ちゃんだから、早く帰ってあげないと奥さんが困ってしまう。だからこんなところでメソメソしちゃいけないって、頭では分かっているのに涙も鼻水も止められない。
(情けない……めちゃくちゃ情けないよ、俺)
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