Chapter:1 出会い

4/19

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/693ページ
「なんなんだろうねぇ、今日は夜桜するには一番ベストなのにね」 「…………ぅ」  そう、今日は絶好の夜桜見物日和。  だから彼女とこれから人気の桜スポットへ出掛けて帰り道でムードたっぷりなキスをしようって……そんな計画を密かに立てていたんだ。 「今日、蒼くんが行こうとしてた場所の桜だって、蒼くん達を優しく迎え入れてさぁ……優しい香りで包んであげて、幸せな気持ちにさせてあげようって思ってたんじゃないかな」 「ううぅ……」  俺は悲しさが(あふ)れてしまって、その場でガチ泣きしてしまった。 (こんなところで泣いちゃいけないのに……健人さんだってこの後やる事いっぱいあるし、(おく)さんも美優(みゆ)ちゃん奏斗(かなと)くんもお家で待っているのに)  健人さんには家族がいる。しかも息子の奏斗くんはまだ赤ちゃんだから、早く帰ってあげないと奥さんが困ってしまう。だからこんなところでメソメソしちゃいけないって、頭では分かっているのに涙も鼻水も止められない。 (情けない……めちゃくちゃ情けないよ、俺)
/693ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加