Chapter10:秋の味覚をご一緒に

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(考え過ぎかもしれないけど、私が食器洗いを担当したらあおくんの話でビックリして手を滑らせてしまう……とか?)  あおくんがわざわざスポンジを先に掴んだのは、私にそれをやらせたら、話の内容にうっかり手を滑らせてしまうと彼が予想してるんじゃないかとか……変な思考が頭の中を駆け巡る。  というのも、食事中に交わした会話内容の中であおくんの発言にところどころ気になる点があったからだ。 (「男」で「長男」だから、台所に立たせてもらえなかった……みたいな話。まるでチャコ叔母さんが苦労してきた時代の話のようだったし。  栗の皮剥き、凄く助かったのにめちゃくちゃ謙遜していたし)  それに、さっき私が叔母さんの過去話をしている最中のあおくんは、真剣に聞いていながらも切ない表情をしていたから。だから今から何かしらあおくんの色々な面が明かされるんじゃないかって……そんな空気をビンビンに感じてしまっていて 「俺の家族……さぁ」  泡のついたスポンジをお皿に滑らしながら発せられた「俺の家族」というワードに 「うんっ!」  必要以上に肩をビクッと震わせ、緊張を高め…… 「はなの家族とか、久子さんの彼氏さんご家族とかみたいに、立派な人間じゃないんだよ」  切ない声で語るその内容に、胸がギュッと苦しくなる。
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